そそる香り
近ごろみんな、香りづけが乱暴すぎる。
「あの子がつけてた香り、何ていうの?」
一緒にいた彼がやたらに興味を示したのは、当時けっこう流行っていたあるセクシー系の香り。
彼に"ムラムラしてくる"とまで言わせた香りならばと、彼女はさっそく手に入れる。
ところが彼は「良くない、クサイ」とののしった。
ムラムラしたのは、香りにじゃなく、つけてたレーザー シミ治療した女の方にじゃないのサと彼女は腹をたてたというけれど、残念ながら半分は当たり。
こんな話もある。
同じ香りをつけていたのに、ある時はそれを「好き」とほめた彼が、別の日には「嫌い」と言った。
これも充分ありうる話です。
今さら"香りのTPO"を守ち出すわけではないが、香りはそれを香らすにふさわしい"人"と"雰囲気"がないと、何もそそらないし、誰の心も動かさない。
演歌が流れる店で飲んだら上等なワインもおいしくないのと同じ。
香りほど激しく想像力をかきたてるものもないと言われるが、香りがつくるイメージ、イマジネーションはまことにデリケートでこわれやすい。
だからつける側はせいぜいそれをぶちこわさないようにすべきなのです。
香りのライト化は、香りを"たやすく自由なもの"へ開放した。
でも本来香りはもっと慎重につけるべきもの。
もっと大事につけてあけると、香りはもっともっと人をそそるんじゃないだろうか。
彼氏が"ムラムラした"という香りを買ってしまったかの女性。
それをただやみくもにつけることをやめ、ふだんは別の香りをつけつづけ、一緒にハワイへ旅行した時、もう一度チャレンジする。
最後の夜のディナーの時、彼の知らないドレスを着て、その香りをていねいにまとうのだ。
案の定、彼は「いい匂い」と言った。
所変われば、香りも変わり、条件が整えば、香りも整う。
香りがいかにデリケートで、人の嗅覚がいかに詩情的な心をもっているかがわかるでしょう。
香りに頼っちゃいけない。
香りは自分で作るものなのです。